歯が動くしくみ・原理

「矯正はお金がかかるし、治療期間も長いから…」となかなか治療に踏み切れないかもしれません。このページでは、歯の見た目の改善だけでない、矯正治療の意義についてご説明します。

このページの監修者

私が監修しました
千葉ニュータウン中央駅前
河合歯科 矯正歯科
院長河合 友輔

歯が動く仕組み

なぜ歯が動くの?

矯正によって歯が動くのは、ヒトの体には「新陳代謝」の機能ががそなわっているためです。新陳代謝によってお肌の細胞が作り替わるのと同様に、骨の細胞も作り替わっています。
歯に力を加えることで、歯周りにある骨(歯槽骨)の代謝が促されて力をかけた方向に徐々に動いていきます。

歯が動く流れ

歯に力をかけることで、どのような流れで歯が動いていくのかをご説明します。

↑これは歯周組織の断面です。歯根の周りには歯を支える「歯槽骨」と、クッションの役割を果たす薄い膜「歯根膜」があります。

矯正装置によって歯に力を加えました。片側の歯根膜は伸び、もう片側の歯根膜は縮んでいます。

歯根膜には「常に一定の厚みを保とうとする性質」があります。伸びた側では骨を作る細胞が活性化し、縮んだ側では骨を溶かす細胞が活性化します。

歯に力をかけ続けることで、「骨ができる」「骨がなくなる」が繰り替えされて徐々に歯が動いていきます。歯列矯正ではこのように歯根膜の性質と骨の代謝を利用して歯を動かします。

毎日指で歯を押していたら 自力で矯正できる?

矯正治療は“歯に力をかけることで徐々に歯を動かす”治療です。それなら「指で歯を押し続けたら自力で動かせるのでは…?」と思ったりしませんか?
はい。そのとおりです。根気よく続ければっば歯は少しずつ動いていきます。でも…、決して綺麗な歯並びにはなりません。矯正治療は“ただ歯を押しているだけ”ではないのです。
綺麗な矯正を実現するには、「押す」だけでなく、「引っ張りだす」「回転させる」といった複雑な歯の移動が必要です。それでは矯正治療における「歯の動きの種類」について、詳しく解説していきます。

歯の動きの種類

矯正で用いる6つの動き

歯列矯正では、これら6つの動きを駆使して歯並びを正しい位置や向きに整えます。それぞれどんな動きか簡単にご説明します。

傾斜移動

傾斜移動は、傾いている歯を立させる動きです。歯に力をかけると、基本的には根っこの先端付近を支点として回転するように動きます。前歯・出っ歯矯正のような前歯だけを動かす矯正はすべて「傾斜移動」でおこないます。

歯体移動

これは歯を歯根ごと並行に移動させる動きです。主に抜歯で空いたスペースを閉じる際に使います。
歯列矯正において歯体移動を起こすのは容易ではありません。矯正装置では歯根に直接力を加えられないため、歯根まで動くような強い力を歯冠だけにかける必要があるからです。そのためには、歯冠全体をホールド(しっかり掴む)しながら強い力をかけられる高性能な矯正装置が必要です。

圧下

圧下は、顎の骨の中に歯を押し込んでいく動きです。開咬(奥歯はかんでいるのに前歯が開いてる)やガミースマイル(笑った時に歯茎が見えすぎる症状)の改善などに役立ちます。圧下すると通常は歯と一緒に歯茎も持ち上がるため、ガミースマイルの改善できます。

回転

回転させて歯の向きのねじれを治す動きです。ワイヤー矯正の場合はブラケットを歯の中心からずらして取り付けることで、ブラケットに通したワイヤーが真っすぐに戻ろうとしてブラケットを中心方向に引っ張る力を活用します。
マウスピース矯正では、マウスピースの形状を「対象の歯を回したい方向にずらして作る」ことで実現します。

挺出

歯茎に埋まりすぎた歯を引っ張り出す動きです。圧下と合わせて、開咬(奥歯はかんでいるのに前歯が開いてる)やガミースマイル(笑った時に歯茎が見えすぎる症状)の改善などに役立ちます。

トルク

歯冠をほとんど動かさずに歯根を傾斜させる動きです。トルクは一度動かした歯の噛み合わせ調整や、後戻り防止のための仕上げに用いられることが多いです。歯は動かしても元の位置に戻ろうとする性質があるため、傾斜移動で歯冠だけ動かしても歯根に合わせて歯が後戻りしやすいです。時間と手間はかかりますが、トルクで歯根も動かすことで後戻りを抑制できます。
歯体移動と同様に歯冠をホールドしながら強い力をかける必要があります。

1ヵ月でどれくらい
歯が動くの?

1ヵ月で0.3~0.5mm程度 歯が動く

歯列矯正によって歯が動く距離は1ヵ月で約0.3〜0.5㎜程です。歯は歯槽骨から少しずつ歯を動かしていくため、1ヵ月で大きく動くことはありません。

動く距離や早さは人それぞれ

歯が動く早さは個人差があります。歯列矯正はで骨の代謝を利用して歯を動かすため、若い人のほうが早く動きやすいです。また、食事・睡眠・運動をバランスよく取っている方や喫煙習慣がない方も代謝が高い傾向があるため歯が早く動きやすいです。

矯正治療の種類

矯正治療は「ワイヤー矯正」と「マウスピース矯正」の2種類があります。それぞれメリット・デメリットが違い、得意な症例も違います。次のページでは2つの矯正方式の違いや特長を詳しく解説していきます。

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